解禁から1年【副業】に消極的な企業。雇用者との意識の乖離とは?
最終更新日:2019年2月3日
政府が推し進める働き方改革の1つとして、2018年1月に「モデル就業規則」の改訂及び「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の制定などを行い、国は事実上の副業解禁へと舵を切りました。
その後1年が経過し、少しづつ副業容認を決める企業も増えては来ましたが、依然その管理の難しさなどから副業解禁に消極的となる企業も多く実質的な浸透には遠い現状があるようです。
「サイボウズ」や「ソフトバンク」、「コニカミノルタ」「ユニ・チャーム」「ロート製薬」などの大企業の導入が目立つ中、ただでさえ人手不足に悩む中小企業にとってはそれどころではないといった意見も聞こえてきます。
資産運用EXPOでのこと
先日、国内最大級の金融商品見本市「資産運用EXPO」に副業アカデミーとしてブース出展を行い、筆者も手伝いとして参加。パンフレットを片手にブースに立ち寄るお客様に向けてご案内をさせて頂きました。
資産運用EXPOでは入場の前に自身のキャリアについて登録する必要がありますから、一般のお客様はそれぞれ首からパスを掲げています。
「会社経営者」や「投資家」「会社員/公務員」といった札を下げながら各企業出展ブースを見て回るのですが、それぞれに声をかけさせて頂いたところやはり経営者の方は"副業"というワードに懐疑的で、訝しげにブースを除きながら去っていくケースが多かったように思います。
そのまま声をかけさせて頂いても「いや、私は副業をさせないようにすることが仕事だから」と言った返答が多く、逆に会社員/公務員の方は対照的に「副業!?興味あります!」とポジティブに返され、積極的にパンフレットや弊社セミナーに耳を傾けて頂けました。
このあたりの乖離、矛盾のようなものが今の日本における人材や雇用、働き方、企業の在り方における課題なのかもしれません。
実際、「エン・ジャパン」が2018年に行った20~40代正社員に向けたアンケートでは、「副業に興味がある」と答えたのは全体の88%と高く、対して経産省が関東近郊の8000社を対象に行った調査では、大企業、中小企業ともに「副業解禁に向けて取り組む予定はない」との回答が8割だったようです。
管理の問題
企業が副業に消極的な理由として多いのは「本業に専念してほしい」「疲労による効率低下が起こる」と言ったもので、次いで労務の問題や、情報漏洩、企業イメージの棄損を懸念したものになります。
また、労働者側が2つ以上の会社に雇用契約を結んだ場合の勤務時間などについて、まだ制度として固まりきっていない部分もあることから、様子見をしている企業が多いと指摘する意見もあるようです。
※厚労省としては、労働者が勤務時間外に副業を行うことについては法的な規制はありませんが、今までの「モデル就業規則」においては平成29年までは副業を禁止する旨の記載があったため、2018年1月に容認するとした表現に改定されました。
確かに本業の後にさらに働くことは長時間労働を助長することにもつながり、残業代や労災、健康管理といった処理に及び腰になってしまうのも無理はないのかもしれません。
しかし最早終身雇用は幻想となり、一つの会社に勤めているだけでは不安が大きいと感じる雇用者側の感覚で言えば、会社の業績よりも自分の生活の方が大切なのは仕方ありません。
EXPOに出展していた企業の中には、TVでCMを頻繫に見たり、学生が内定を渇望するような大企業も数多く見られましたが、そこで営業活動に勤しむビジネスパーソンでさえ副業アカデミーブースに立ち寄り目を丸くして話を聞いていた姿が、私としては非常に印象的でした。