求められる個々の自衛力
最終更新日:2021年12月22日
新型コロナウイルス感染拡大止まらず。自衛力が個々に求められる時代到来か
中国湖北省武漢市に端を発した新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。
4月7日には安倍首相が東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県を対象に、5月6日まで効力が続く「緊急事態宣言」を行いました。
また、4月16日には「緊急事態宣言」の対象地域を全国に拡大。
従前の7都府県に、蔓延が進んでいるとされる北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府を加えた13都道府県を「特定警戒都道府県」とすることも発表されました。
海外のように厳格な「都市封鎖」を行うような実行力は伴わないものの、相次ぐ外出の自粛要請などで既に中小企業や個人事業主を中心に、多大な影響が出ています。
そんな中、企業が社員の生活を守るための手段として「副業」を取り入れるといった動きも出始めています。
新型コロナウイルスの感染拡大によって業績悪化の煽りを受けている業界は多数あると思いますが、中でもその影響が大きいのが旅行業界です。
4月15日には日本政府観光局(JNTO)から衝撃的な発表がありました。2020年3月の訪日外国人客が前年同月比で93.0%も減ったという内容です。
多くの国において海外渡航制限や外出禁止等の措置が取られたことに加え、日本においても検疫強化や査証の無効化等の措置が取られたことが主な原因とされます。
この減少幅は東日本大震災直後の2011年4月に記録した62.5%の減少を超える過去最大の落ち込みとなりました。
帝国データバンクの発表によると、2020年4月16現在で、こうした影響の煽りを受けて廃業に追い込まれた旅館やホテルは全国で12件、旅行会社も2件あるといいます。
同日現在でコロナウイルス関連倒産は全61件なので、その2割以上の数を旅行関連の企業が占めていることになります。
そんな中、東京都中野区の旅行会社では、臨時休業を余儀なくされている社員の生活を維持するため、「副業解禁」に踏み切りました。
この旅行会社ではモンゴルやネパールなどへのツアー企画や販売を行っており、大阪の支社と含めて約30名が働いています。
しかし、コロナウイルスの感染拡大によって売上が昨年同月比で約70%減少。
加えて、5月末までの全てのツアーを中止せざるを得なくなりました。
同社では現在、緊急事態宣言が解除される5月6日までを臨時休業として、雇用調整助成金の手続きを進めているそうです。
社員へは休業手当が支払われますが、それだけでは社員の生活維持が難しいことや、そもそも緊急事態宣言が予定通り解除されるかも不透明であるため、営業再開の見通しも立てづらいことから、副業の解禁に踏み切ったとのこと。
社員の中には既にハローワークで仕事を見つけ、取り組んでいる人もいるようです。
働き方改革の影響を飲み込んだコロナウイルス
もともと2020年4月は中小企業にも「残業時間の上限規制」が適用されるタイミングとして、昨年4月の「働き方改革関連法」施行時から注目されていました。
日本は全事業者のうち99.7%が中小企業(2018年11月30日、中小企業庁の発表による。)という「中小企業大国」であるため、「働き方改革」の影響が本格的に出始めるタイミングと目されていたからです。
残業時間の上限が規制されることによって、給与所得者の手取り額が減り、消費が冷え込むのではないかといった懸念も多かったですが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でテレワークの導入や臨時休業が相次ぎ、残業規制以前の問題となりました。
無論、コロナウイルスによる影響は残業規制による影響を遥かに上回っています。
こうした影響を鑑み、4月7日には「新型コロナウイルス感染症対策緊急経済対策」が閣議決定され、休業等により収入が減少したり生活に困っている世帯に対して「生活支援臨時給付金(仮称)」として30万円が支給されることが決定しました。
しかし、この施策には対象者の線引が分かりにくい等の指摘が相次いだことで与党内でも意見が割れ、4月16日には一転して全国民を対象として一律10万円を支給する方向に舵を切るというドタバタ劇も起きています。
これまでに経験したことの無い状況だからこそ、政府には国民を安心させる為の迅速で適切な判断をしてもらいたいところですが、残念なことにここまでの対応では与野党の足並みは揃わず、「浮足立っている」といった表現を用いざるをえないでしょう。
個々の自衛力が求められる時代
年金2000万円問題などの浮上や今回のコロナウイルス対策における対応などを見ていても、今の政府には、我々国民一人ひとりの実態を把握して適切な策を講じる力が欠如しているように思えます。
もちろん一納税者としては「こういう時に助けてもらえないなら、何の為に払っている税金なのか」といった気持ちが無いわけではないですが、一方では「やはり期待するだけ無駄か」という冷めた感覚が湧いてきてしまいます。
今後、日本社会、ひいては地球全体が、より大きなリスクに直面する機会も多々あるでしょう。
昨年千葉県を中心に甚大な被害を及ぼした大型台風や、オーストラリアで起きた巨大な森林火災などは記憶に新しいところです。
そんなリスクに襲われた時、国が適切な施策を行えるという望みは非常に薄い。
預貯金などによって目に見える資産形成をすることはもちろんですが、副業や兼業、スキルアップに取り組むことで目には見えない資産の形成を進めていくことこそが肝要になってきそうです。