2022.07.29
株のスイングトレードは副業でできる?会社員が知っておきたいリスクと、損失を限定する考え方
「会社員でも、株のトレードを副業にできる?」「スイングトレードなら、仕事をしながらでも続けられる?」。株式投資に興味を持ち、短期の売買(トレード)を調べている方も多いのではないでしょうか。
最初に知っておきたいのは、株式トレードに「負けない方法」や「必ず勝てる方法」はないということです。株価は予想どおりに動くとは限らず、どんなに経験のある人でも損失は出ます。だからこそ大切なのは、損失が出ることを前提に、1回の損失と全体の損失をあらかじめ限定しておくことです。
この記事では、会社員が副業として株式トレードを考えるときに知っておきたい、トレードの種類、リスク、損失を限定するための考え方、チャート分析の基本と限界、税金や勤務先のルールを解説します。
この記事の要点
株式トレードに「負けない方法」はありません。損失が出ることを前提に、1回あたりと全体の損失の上限を決めておくことが基本です。
日中に取引画面を見られない会社員には、数日〜数週間で売買するスイングトレードが比較的合わせやすい一方、保有中の急な値下がりや、取引時間外の値動きのリスクがあります。
信用取引や空売りは、損失が預けたお金を上回ることもある仕組みです。仕組みを理解するまでは使わないほうが無難です。
チャートの分析は判断材料の1つで、将来の値動きを保証するものではありません。勤務時間中の取引は避け、税金のルールも確認しましょう。
株式トレードとは:長期投資との違い
株式投資には、企業の成長に期待して数年以上持ち続ける「長期投資」と、数分〜数週間の値動きから利益をねらう「トレード(短期売買)」があります。トレードは、保有する期間によってさらに次のように分かれます。
スキャルピング
デイトレード
スイングトレード
長期投資
保有期間
数秒〜数分
その日のうち
数日〜数週間
数年以上
主に見るもの
板・瞬間の値動き
その日の値動き
数日〜数週間の値動き(チャート)
企業の業績・成長性
会社員との相性
難しい(取引時間中に張り付く必要がある)
難しい(取引時間中に判断が必要)
比較的合わせやすい(注文は夜や休日に準備できる)
合わせやすい(積立なら手間は少ない)
主なリスク
取引回数が多く、判断ミスが積み重なりやすい
短時間の急な値動き
保有中の急な値下がり、取引時間外のニュースによる値動き
長期間の値下がり、企業の業績悪化
東京証券取引所の取引時間は、平日の9時〜11時30分と12時30分〜15時30分です。日中に本業がある会社員にとって、取引時間中に画面を見続ける必要があるデイトレードやスキャルピングは現実的ではありません。そのため、副業として考えるなら、注文の準備を夜や休日にできるスイングトレードか、長期投資が候補になります。
ただし、スイングトレードは長期投資よりも売買の回数が多く、判断の機会も増えます。株式投資そのものの始め方や、会社員が長期で続けやすいやり方は会社員が副業で株式投資を始める前に知っておきたいことで解説しています。
個人のトレードで損失が大きくなりやすい理由
損切りができず、損失が膨らむ
買った株が値下がりしたとき、「もう少し待てば戻るはず」と売れずにいるうちに、損失が大きくなってしまうことがあります。人は損を確定させることを避けたがる傾向があり、決めていたルールがあっても、いざとなると守れなくなりがちです。
1回の取引に資金をかけすぎる
手元の資金の大部分を1つの銘柄につぎ込むと、1回の失敗で資金の多くを失います。そうなると、取り戻そうとして無理な取引を重ねる悪循環にもつながります。
長期投資の考え方とトレードの考え方が混ざる
トレードのつもりで買ったのに、値下がりすると「長期で持てばいい」と方針を変えてしまうことがあります。いわゆる塩漬けの状態です。値下がりした銘柄を買い増して平均の購入価格を下げる「ナンピン」も、根拠がないまま行うと損失を広げることがあります。買う前に「どんな目的で、いつまで持つか」を決めておくことが大切です。
損失を限定するための考え方
トレードで最も大切なのは、利益をどれだけ増やすかより、損失をどこまでに抑えるかを先に決めておくことです。次のような考え方が基本になります。
1. 投資に回すお金の上限を決める
トレードに使うのは、生活費や近いうちに使う予定のお金とは分けた、失っても生活に影響しない余裕資金だけにしましょう。株式投資は元本が保証されていません。
2. 1回の取引で許容する損失の上限を決める
「1回の取引で失ってよいのは、投資資金全体の◯%まで」と先に決めておくと、1回の失敗で大きく資金を失うことを防げます。たとえば、投資資金が50万円で、1回の損失を全体の1%(5,000円)までにすると決めた場合、買った価格から10%下がったら売ると決めているなら、1回に買う金額は5万円が上限になります(5万円×10%=5,000円)。これは計算のしかたを示す例で、特定の数値や売買方法を勧めるものではありません。何%にするかは、自分の資金や考え方に合わせて決めてください。
3. 売る条件を、買う前に決めておく
「いくらまで下がったら売る」「どうなったら利益を確定する」という条件を、買う前に決めておきます。値動きを見ながら考えると、感情に流されやすくなるためです。証券会社の「逆指値注文」(決めた価格まで下がったら自動で売る注文)を使うと、日中に画面を見られなくてもルールを実行しやすくなります。ただし、株価が大きく値下がりして始まった場合などは、決めた価格より不利な価格で売れることもあります。
4. 一度に持つ銘柄の数を、管理できる範囲にする
本業があると、毎日チェックできる銘柄の数には限りがあります。持ちすぎて値動きを把握できなくなるのも、1つの銘柄に集中しすぎるのも、リスクを高めます。自分が毎日確認できる範囲に絞りましょう。
5. 取引を記録して、振り返る
買った理由、売った理由、結果を記録しておくと、自分の判断のくせや、ルールを守れなかった場面が見えてきます。勝ち負けの結果だけでなく、「決めたルールどおりに動けたか」を振り返ることが大切です。
信用取引・空売りのリスクを知っておく
信用取引は、証券会社に保証金を預け、その約3.3倍までの金額の取引ができる仕組みです。手持ちのお金より大きな取引ができる一方、損失も同じだけ大きくなります。株価が下がって保証金が不足すると、追加の保証金(追証)を差し入れなければならず、損失が預けたお金を上回ることもあります。借りたお金や株には、金利や貸株料などの費用もかかります。
株を借りて売り、値下がりしたところで買い戻して利益をねらう「空売り」も信用取引の一種です。株価の上昇には上限がないため、予想に反して値上がりすると、損失が大きく膨らむおそれがあります。
仕組みとリスクを十分に理解するまでは、自分のお金の範囲で取引する「現物取引」だけにしておくのが無難です。
チャート分析の基本と限界
トレードでは、株価の動きをグラフにした「チャート」から値動きの傾向を読み取る「テクニカル分析」がよく使われます。代表的な見方には次のようなものがあります。
ローソク足:一定期間(1日、1週間など)の始値・終値・高値・安値を1本で表したもの。値上がりした期間と値下がりした期間で色や形が変わります
移動平均線:一定期間の終値の平均を結んだ線。株価の大まかな方向(上昇傾向か下降傾向か)をつかむのに使われます
トレンドライン・水平線:過去の安値どうしや高値どうしを結んだ線。多くの投資家が意識しやすい価格帯の目安とされます
出来高:売買が成立した株数。出来高が少ない銘柄は、売りたいときに売れないことがあります
MACD・ボリンジャーバンド:移動平均や値動きのばらつきをもとにした指標。売買の判断材料の1つとして使われます
こうした分析は、過去の値動きのパターンや、多くの投資家の心理を読み取るための道具です。ただし、指標の「サイン」どおりに株価が動くとは限らず、将来の値動きを保証するものではありません。決算発表や経済ニュース、市場全体の急変動などで、チャートの形とは関係なく株価が大きく動くこともあります。チャート分析は、損失を限定するルールとセットで使うことが前提です。
また、日本の株式には、1日に動ける値幅の上限(値幅制限)があります。ストップ安(その日の下限まで値下がりした状態)になると、売りたくても売れないことがあります。
会社員がトレードをするときの注意点
勤務時間中に取引しない
勤務時間中に株価を見たり取引したりすると、本業に集中する義務に反し、懲戒処分の対象になるおそれがあります。会社のパソコンやネットワークを使った取引も避けましょう。注文は、始業前・休憩時間・帰宅後・休日に準備し、逆指値注文などを活用します。
勤務先のルールとインサイダー取引
株式投資は、多くの会社で副業として扱われていませんが、最終的には勤務先の就業規則しだいです。金融機関や上場企業などでは、株式の売買に社内ルールがある場合もあります。また、仕事で知った未公表の重要な情報(取引先の業績や合併の予定など)をもとに株を売買すると、インサイダー取引として法律で罰せられます。就業規則での扱いは投資は副業になる?就業規則での扱いで解説しています。
税金のルール
上場株式の売却益や配当には、所得税と住民税がかかります。証券会社の「特定口座(源泉徴収あり)」を選べば、税金の計算と納付を証券会社が行うため、原則として確定申告は不要です。損失が出た年は、確定申告をすると、翌年以後3年間、その損失を繰り越して利益と差し引けます。
NISA口座でも売買はできますが、NISA口座で出た損失は、ほかの口座の利益と差し引いたり繰り越したりできません。短期の売買を繰り返す使い方は、NISAの非課税の枠を活かしにくい点にも注意が必要です。NISAについては会社員の初心者向けの投資の選び方で解説しています。
「必ず勝てる」投資話に注意
SNSなどで「必ず勝てる」「高い勝率」「◯日で資産◯倍」とうたう投資の勧誘や、有名人を名乗る投資グループへの誘いによる被害が多く報告されています。証券会社などの金融商品取引業者が「必ずもうかる」と断定したり、損失を補うと約束したりして勧誘することは、法律で禁止されています。投資の助言や運用をうたう業者と取引する前に、金融庁のWebサイトで登録業者かどうかを確認しましょう。
よくある質問
Q. 株式トレードで負けない方法はありますか?
A. ありません。株価は予想どおりに動くとは限らず、どんなに経験のある人でも損失は出ます。大切なのは、損失が出ることを前提に、1回あたりと全体の損失の上限を決め、そのルールを守ることです。
Q. 会社員でもスイングトレードはできますか?
A. 数日〜数週間で売買するスイングトレードは、注文の準備を夜や休日にできるため、デイトレードより会社員が合わせやすい方法です。ただし、保有中に急な値下がりが起きることや、取引時間外のニュースで株価が大きく動くことがあります。勤務時間中の取引は避けましょう。
Q. 損切りはどう決めればいいですか?
A. 「投資資金全体の◯%まで」「買値から◯%下がったら売る」など、買う前に条件を決めておくのが基本です。具体的な数値は、資金の額や考え方によって人それぞれです。逆指値注文を使うと、画面を見られなくてもルールを実行しやすくなります。
Q. 信用取引や空売りは初心者でも使えますか?
A. 証券会社の審査を通れば使えますが、損失が預けたお金を上回ることもある仕組みです。仕組みとリスクを十分に理解するまでは、自分のお金の範囲で取引する現物取引だけにしておくのが無難です。
Q. チャート分析を覚えれば勝てるようになりますか?
A. チャート分析は判断材料の1つで、将来の値動きを保証するものではありません。決算やニュースで、チャートの形と関係なく株価が大きく動くこともあります。損失を限定するルールとセットで使いましょう。
Q. いくらから始められますか?
A. 銘柄によっては数万円程度から買えます。ただし、トレードに使うのは、生活費とは分けた、失っても生活に影響しない余裕資金だけにしてください。株式投資は元本が保証されていません。
Q. トレードの利益に税金はかかりますか?
A. 上場株式の売却益には所得税と住民税がかかります。特定口座(源泉徴収あり)なら証券会社が納税まで行うため、原則として確定申告は不要です。損失を翌年以後に繰り越すには、確定申告が必要です。
Q. 勤務時間中に株価をチェックしてもいいですか?
A. 避けてください。勤務時間中の取引や株価の確認は、本業に集中する義務に反し、懲戒処分の対象になるおそれがあります。注文は始業前や帰宅後に準備し、逆指値注文などを活用しましょう。
Q. 「必ず勝てる」という投資の勧誘を受けました。
A. 「必ずもうかる」「損はさせない」といった勧誘は、詐欺の可能性があります。登録を受けた業者がこうした勧誘をすることは法律で禁止されています。お金を振り込む前に、金融庁のWebサイトで登録業者かどうかを確認し、不安なときは消費者ホットライン「188」や金融庁の相談窓口に相談してください。
※この記事は、株式トレードの一般的な仕組みとリスクを解説したもので、特定の銘柄・商品の購入や売買のタイミングを勧めるものではありません。株式投資には元本割れのリスクがあり、信用取引では預けた保証金を上回る損失が出ることがあります。投資の判断はご自身の責任で行ってください。税金の詳細は税務署や税理士にご確認ください。
まとめ
株式トレードに「負けない方法」はありません。会社員が副業として取り組むなら、取引時間中に画面を見続ける必要がないスイングトレードや長期投資が候補になりますが、どの方法でも損失は出ます。大切なのは、余裕資金の範囲で、1回あたりと全体の損失の上限を先に決め、記録をつけてルールを守り続けることです。
信用取引や空売りは仕組みを理解するまで使わず、チャート分析は判断材料の1つとして使いましょう。勤務時間中の取引を避け、就業規則や税金のルールも確認しておくことが大切です。
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