2018.07.24
投資は副業になる?就業規則での扱いと、住民税で会社に知られる仕組み・公務員の基準
「会社が副業禁止だけど、投資なら大丈夫?」「株で利益が出たら、会社に知られてしまう?」。副業アカデミーにも、会社員の方からよく寄せられる相談です。
この記事では、投資が副業にあたるかどうかを、法律と会社の就業規則の両面から整理します。あわせて、投資をしていることが会社に知られるきっかけ(主に住民税)と、公務員の基準、やってはいけない対策を解説します。
この記事の要点
法律に「副業」の定義はなく、株式や投資信託などの資産運用は一般に副業に含まれないと考えられています。ただし、最終的には会社の就業規則しだいです。
株や投資信託を「特定口座(源泉徴収あり)」で取引し、確定申告をしなければ、利益にかかる住民税は証券会社が差し引くため、会社に届く住民税の額には通常反映されません。NISAの利益は非課税です。
FX・暗号資産・不動産の利益は確定申告が必要で、住民税に反映されます。申告書で住民税を「自分で納付(普通徴収)」にする方法がありますが、確実ではありません。
家族名義の口座で取引する、申告しないといった方法は、法的なリスクがあるため避けてください。いちばん安全なのは、就業規則を確認し、必要なら会社に確認・届出をすることです。
投資は副業になる?法律と就業規則の考え方
法律では「投資は副業か」は決まっていない
法律には、何が副業にあたるかの定義はありません。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、副業・兼業を「2つ以上の仕事を掛け持つこと」と想定し、雇用される形や、自分で事業を行う形、業務を請け負う形などを例に挙げています。
株式や投資信託の売買は、労働を提供する「仕事」ではなく、自分のお金を運用する資産運用です。そのため、一般には副業に含まれないと考えられています。
最終的には会社の就業規則しだい
会社員が副業をしてよいかどうかは、会社の就業規則で決まります。投資を副業として扱うかどうかも同じで、会社ごとに異なります。次の点を確認してみてください。
副業の規定が「他の会社の業務に従事すること」を対象にしているのか、「営利を目的とする行為」全般を対象にしているのか
自社株や取引先の株の売買について、事前申請や売買できない期間などの決まりがないか
金融機関、監査法人、報道機関など、業種として社員の株式売買を制限していないか
規則を読んでも判断できない場合は、人事や総務に確認するのが確実です。「株式や投資信託での資産運用は、副業の規定の対象になりますか」と聞けば、個人的な事情を詳しく話す必要はありません。
会社が副業を制限できるのは、どんな場合か
勤務時間外の時間をどう使うかは、基本的に働く人の自由です。裁判例では、会社が副業を制限できるのは、次のような場合に限られると考えられています。
本業の仕事に支障が出る場合
会社の秘密が漏れる場合
競業によって、会社の利益を害する場合
会社の名誉や信用を傷つける場合
投資でいえば、次のようなケースは問題になりやすいので注意してください。
勤務時間中に取引をする、会社のパソコンで取引する
仕事で知った、公表前の情報をもとに株を売買する(インサイダー取引として法律で罰せられるおそれがあります)
何棟ものアパートを経営するなど、事業といえる規模になる
知人を投資に勧誘して紹介料を受け取る(これは投資ではなく、副業や無登録の勧誘にあたる可能性があります)
副業禁止の規定がどこまで認められるかは「副業禁止は合法?違法?」で詳しく解説しています。
公務員の投資はどこまでできる?
公務員は、国家公務員法や地方公務員法で兼業が制限されています。ただし、株式や投資信託への投資は、原則としてこの制限の対象外とされています。
一方、不動産の賃貸や太陽光発電は、規模が大きくなると「自営」として扱われ、承認が必要になります。国家公務員の場合、人事院の運用で、次のいずれかに当たると承認が必要とされています。
独立した家屋の賃貸が5棟以上
アパートやマンションなど、独立した家屋以外の賃貸が10室以上
土地の賃貸が10件以上
駐車場の賃貸が10台以上、または建物式・機械式の駐車場
賃貸料の収入が年額1,000万円以上
太陽光発電設備の出力が50キロワット以上
賃貸料収入と太陽光発電の基準は、2026年4月に見直されました(それまでは年額500万円以上、10キロワット以上)。あわせて、職員の知識・技能をいかした事業や社会貢献に資する事業も、承認を受ければ営めるようになっています。
この規模に達しない場合でも、管理業務は管理会社に任せるなど、職務に支障が出ないようにすることが前提です。地方公務員は自治体ごとに運用が異なるため、始める前に所属先の人事担当に確認してください。
投資をしていることが会社に知られるきっかけ
投資をしていることが会社に知られるきっかけとして多いのは、副業と同じく住民税です。会社員の住民税は、会社が毎月の給与から天引きして納めているため(特別徴収)、毎年5月ごろ、市区町村から会社に住民税の決定通知が届きます。給与以外の所得が増えると、その分の住民税も上乗せされて通知されることがあります。
ただし、投資の種類と口座の選び方によって、住民税への影響は大きく違います。
株式・投資信託:口座の選び方で変わる
証券会社で「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶと、売却益や配当にかかる税金(所得税と住民税)は、証券会社が差し引いて納めてくれます。確定申告をしなければ、この住民税は会社を通さずに納められるため、会社に通知される住民税の額には通常反映されません。
一方、損失を翌年以降に繰り越したり、ほかの口座の利益と相殺したりするために確定申告をすると、その内容は住民税の計算にも反映されます。2024年度の住民税からは、所得税で確定申告に含めた株の利益や配当は、住民税でも同じように扱われるようになっています。
NISA:利益は非課税
NISA口座で得た利益や配当は非課税なので、住民税も増えません。NISAの仕組みや、初心者の始め方は「初心者の会社員が知っておきたい投資の基本」で解説しています。
FX・暗号資産・不動産:確定申告が必要
FX、暗号資産(仮想通貨)、不動産の家賃収入で利益が出た場合は、原則として確定申告が必要です。申告した所得は住民税に反映されます。
これらは給与以外の所得なので、確定申告書の第二表で、住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」にすることができます。そうすると、その分の住民税の納付書は自宅に届き、自分で納めることになります。ただし、自治体の処理によっては会社に通知される場合もあるため、申告後に市区町村の住民税担当へ確認しておくと安心です。
住民税の仕組みと普通徴収の手順は「副業が会社にバレる原因と住民税「普通徴収」の手順」で詳しく解説しています。
税金以外のきっかけ
同僚に話した、SNSで投資の話を発信していたなど、人づてで知られることもあります。また、不動産投資でローンを組むときは、金融機関が勤務先に在籍確認をすることがあります。
やってはいけない「会社に知られないための方法」
ネット上には、会社に知られずに投資をする方法として、次のようなものが紹介されていることがあります。いずれも法的なリスクがあるため、避けてください。
家族など他人の名義で取引する
自分のお金を家族の名義の口座で運用することは、他人の名義を借りた取引(借名取引)にあたり、証券会社の規定で禁止されています。税金の上でも、実際にお金を出して運用した本人の所得として扱われるため、申告漏れや脱税とみなされるおそれがあります。
申告が必要な利益を申告しない
FXや暗号資産などの利益を申告しないと、後から本来の税金に加えて、無申告加算税や延滞税がかかる可能性があります。申告漏れが見つかって修正された住民税が会社経由で徴収されれば、かえって会社に知られるきっかけにもなります。
会社に隠すために法人をつくる
投資用の会社を設立して代表や役員になること自体が、就業規則の副業規定に触れる可能性があります。公務員は、営利企業の役員を兼ねることが法律で禁止されています。
会社から聞かれたときに事実と違うことを答える
投資そのものは問題にならなくても、会社の確認に事実と違う答えをすると、信頼を失い、それ自体が処分の理由になりかねません。
会社に知られる心配をせずに投資をするには
会社に知られないように気をつけ続けるのは、精神的な負担も大きいものです。次の順番で考えると、安心して続けやすくなります。
就業規則で、投資や株式の売買についての決まりを確認する
判断に迷う場合は、人事や総務に確認する。届出や許可が必要なら手続きをする
NISAや投資信託の積立など、勤務時間中に売買しなくてよい方法を選ぶ
自社株・取引先の株は、社内ルールとインサイダー取引に特に注意する
投資の利益はどの所得になる?
投資の利益は、種類によって所得の区分と税金のかかり方が違います。株やFXの利益は、給与と合算する所得ではないため、損失が出ても給与の所得から差し引くことはできません。
上場株式・投資信託の売却益:上場株式等の譲渡所得等。税率20.315%の申告分離課税(特定口座で源泉徴収ありなら、原則申告不要)
株式の配当:配当所得。上場株式の配当は、受け取るときに税金が差し引かれ、原則申告不要
FX(国内の業者):先物取引に係る雑所得等。税率20.315%の申告分離課税
暗号資産:現在は原則として雑所得で、給与などと合算する総合課税。株式と同じ20%の申告分離課税に変える法律の改正が決まっていますが、適用は早くて2028年からと見込まれています
不動産の家賃収入:不動産所得。給与と合算して税額を計算
会社員で給与以外の所得が年20万円以下なら所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は別に必要です。詳しくは「副業の20万円ルールとは?」を、確定申告の手順は「副業の確定申告のやり方」をご覧ください。
よくある質問
Q. 投資は副業になりますか?
A. 法律に副業の定義はなく、株式や投資信託などの資産運用は、一般に副業に含まれないと考えられています。ただし、投資を副業として扱うかどうかは会社の就業規則で決まるため、必ず自分の会社の規則を確認してください。
Q. 就業規則で副業が禁止されていたら、投資もできませんか?
A. 副業の規定が「他の会社の業務に従事すること」を対象にしている場合、資産運用は含まれないことが多いです。ただし規定の書き方は会社ごとに違うため、判断に迷う場合は人事や総務に確認してください。
Q. 株で利益が出たら、住民税で会社に知られますか?
A. 「特定口座(源泉徴収あり)」で取引し、確定申告をしなければ、利益にかかる住民税は証券会社が差し引いて納めるため、会社に通知される住民税の額には通常反映されません。確定申告に含めた場合は、住民税の計算にも反映されます。
Q. NISAで投資をすれば、会社に知られませんか?
A. NISA口座で得た利益や配当は非課税なので、住民税も増えません。ただし、人づてで知られることはあるため、会社のルールで投資が制限されていないかは確認しておきましょう。
Q. FXや暗号資産の利益は、会社に知られますか?
A. FXや暗号資産の利益は原則として確定申告が必要で、住民税に反映されます。確定申告書で住民税を「自分で納付(普通徴収)」にすると会社に通知されにくくなりますが、自治体の処理によっては通知される場合もあり、確実ではありません。
Q. 公務員でも投資はできますか?
A. 株式や投資信託への投資は、公務員でも原則として兼業の制限の対象外です。不動産の賃貸は、国家公務員の場合、5棟以上・10室以上・賃貸料収入が年額1,000万円以上などの規模になると承認が必要です。地方公務員は所属先の人事担当に確認してください。
Q. 不動産投資は副業になりますか?
A. 小規模な賃貸は資産運用として扱われることが多いですが、規模が大きくなると事業とみなされ、会社によっては副業の規定の対象になります。公務員の場合は、5棟10室や賃貸料収入年額1,000万円などの基準を超えると承認が必要です。
Q. 家族の名義で取引すれば、会社に知られませんか?
A. やめてください。他人の名義を借りた取引は証券会社の規定で禁止されており、税金の上でも実際に運用した本人の所得として扱われます。申告漏れや脱税とみなされるおそれがあります。
Q. 投資をしていることを、会社に報告する必要はありますか?
A. 就業規則で届出や事前申請が決められている場合は、それに従う必要があります。特に決まりがなければ報告の義務はないことが多いですが、自社株や取引先の株の売買には社内ルールがある場合があるため、確認しておきましょう。
※この記事は、執筆時点の制度をもとに一般的な内容を解説したものであり、特定の金融商品の購入や売買をおすすめするものではありません。投資には元本割れなどのリスクがあります。就業規則の解釈は会社ごとに異なるため、勤務先にご確認ください。税金の詳細は、国税庁のWebサイト、税務署、税理士などの専門家にご確認ください。
まとめ
株式や投資信託などの資産運用は、一般に副業に含まれないと考えられていますが、最終的には会社の就業規則しだいです。公務員も、株式や投資信託への投資は原則として可能ですが、不動産の賃貸は規模によって承認が必要です。
株や投資信託を特定口座(源泉徴収あり)で取引したり、NISAを使ったりすれば、住民税から会社に知られる可能性は低くなります。一方で、家族名義での取引や申告をしないといった方法は、法的なリスクがあるため避けてください。いちばん安全なのは、就業規則を確認し、必要なら会社に確認・届出をしたうえで、勤務時間中に売買しなくてよい方法で始めることです。
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