2021.12.03
副業で青色申告はできる?雑所得では使えない理由と、事業所得の判断基準・申請の手順
「副業でも青色申告をすれば節税できるって本当?」「65万円控除を使いたいけれど、副業でも申請できるの?」。副業の確定申告を調べていて、青色申告が気になった方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、副業で青色申告ができるのは、副業の所得が「事業所得」または「不動産所得」(ほかに山林所得)にあたる場合だけです。会社員の副業の所得は「雑所得」にあたることが多く、雑所得では青色申告はできません。事業所得になるかどうかは、取引を記録した帳簿や書類を保存しているかが大きな目安になります。
この記事では、青色申告と白色申告の違い、副業で青色申告ができるかどうかの判断のしかた、メリット・デメリット、始めるときの手順を解説します。
この記事の要点
青色申告ができるのは、事業所得・不動産所得・山林所得だけです。雑所得、給与所得、株式の譲渡所得などではできません。
副業の所得が事業所得か雑所得かは、帳簿書類を保存しているかが大きな目安です。保存していても、収入がわずかな場合などは雑所得になります。
青色申告には、特別控除、赤字の3年繰越などのメリットがあります。そのかわり、帳簿づけと事前の届出が必要です。
青色申告の承認申請書は、原則として青色申告をしたい年の3月15日までに提出します。控除額や要件は税制改正で変わるため、最新の内容は国税庁で確認しましょう。
青色申告とは:白色申告との違い
個人の確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告は、決められた方法で帳簿をつけ、事前に税務署の承認を受けた人が選べる申告方法で、そのかわりに税金の面でいくつかの優遇を受けられます。届出をしていなければ、自動的に白色申告になります。
白色申告
青色申告
事前の手続き
不要
青色申告承認申請書の提出が必要
帳簿づけ
簡易な帳簿でよい(記帳と保存は必要)
決められた帳簿が必要。控除額の大きい区分は複式簿記
特別控除
なし
あり(帳簿のつけ方と申告方法で控除額が変わる)
赤字の繰越
一部の損失を除き、できない
翌年以後3年間繰り越せる
家族への給与
経費にできる額に上限がある(事業専従者控除)
届け出た範囲で、適正な額を経費にできる
対象になる所得
すべての所得
事業所得・不動産所得・山林所得だけ
なお、青色申告か白色申告かを考える前に、そもそも確定申告が必要かを確認しておきましょう。会社員の場合、給与以外の所得(収入から経費を引いた金額)が年20万円を超えると、所得税の確定申告が必要です。20万円以下でも、住民税の申告は別に必要です。詳しくは副業の20万円ルールの記事で解説しています。
副業で青色申告ができるかは「所得の種類」で決まる
青色申告の対象は、事業所得・不動産所得・山林所得だけ
所得税では、所得を10種類に分けて計算します。このうち青色申告ができるのは、事業所得、不動産所得、山林所得の3つだけです。副業の内容ごとに、おおむね次のように分かれます。
副業の例
主な所得の種類
青色申告
アルバイト・パートなど、雇われて働く
給与所得
できない
株式・投資信託の売買や配当
譲渡所得・配当所得など
できない
FX・暗号資産の取引
雑所得が中心
原則できない
物販、ライティング、デザイン、動画編集など
事業所得または雑所得
事業所得にあたる場合だけできる
アパートや駐車場などの賃貸
不動産所得
できる(規模によって控除額が変わる)
※同じ副業でも、契約の形や取り組み方によって所得の種類が変わることがあります。
不動産の賃貸は、規模が「事業的規模」(目安として、アパートなどは貸せる独立した部屋がおおむね10室以上、一戸建てはおおむね5棟以上)かどうかで、受けられる特別控除の額が変わります。事業的規模に満たない場合も青色申告はできますが、特別控除は最も低い区分になります。
事業所得か雑所得かは、帳簿書類の保存が大きな目安
物販やライティングのような副業は、同じ内容でも、事業所得になる場合と雑所得になる場合があります。国税庁は2022年分以後の取扱いとして、次のような考え方を示しています。
取引を記録した帳簿書類を保存している場合:おおむね事業所得になります。ただし、収入がわずかな場合や、利益を出す目的が認められない場合(赤字が続いていて改善の取り組みもないなど)は、事業所得にあたらないことがあります
帳簿書類を保存していない場合:おおむね業務に係る雑所得になります(収入金額が300万円を超え、事業と認められる事情がある場合などの例外もあります)
最終的には、その活動が社会通念上「事業」といえる程度かどうかで判断されます。自分でリスクを負って独立して営んでいるか、利益を出す目的で継続して行っているか、そのための時間や手間をかけているか、といった点が見られます。本業の合間に少額の収入がある程度なら、雑所得になると考えておくのが無難です。判断に迷う場合は、税務署や税理士に相談しましょう。
雑所得の赤字は、給与と相殺できない
所得の種類によって、赤字の扱いも違います。事業所得や不動産所得の赤字は、一定の条件のもとで給与所得などと差し引きできます(損益通算)。一方、雑所得の赤字は給与所得と差し引きできません。
「副業の赤字で給与の税金を減らせる」といった話を見かけることがありますが、実態が事業といえない活動を事業所得として申告すると、税務調査で否認され、追加の税金がかかることがあります。所得の種類は、節税のために選べるものではありません。
青色申告のメリット
1. 青色申告特別控除で、所得を減らせる
青色申告の最大のメリットは、所得から一定額を差し引ける「青色申告特別控除」です。所得が減ると、所得税だけでなく住民税も少なくなります。控除額は、帳簿のつけ方と申告の方法によって段階的に決まっています。
2026年分まで:最高65万円(複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して、e-Taxでの申告または電子帳簿保存をした場合など)
2027年分から:税制改正により、最高75万円(e-Taxでの申告に加えて、優良な電子帳簿の保存などをした場合)に見直されます
どちらも、簡易な帳簿の場合や事業的規模でない不動産所得の場合は、最も低い区分(10万円)になります(2027年分以後は、前々年の収入金額が一定額を超えると控除がなくなる見直しもあります)
控除額の区分と細かな要件は、税制改正で変わることがあります。申告する年分の要件を、国税庁のWebサイト(タックスアンサー「青色申告特別控除」)で確認してください。また、期限を過ぎてから申告すると、高い区分の控除は受けられなくなります。
2. 赤字を翌年以後3年間繰り越せる
青色申告をしている年に事業で赤字(純損失)が出た場合、その赤字を翌年以後3年間にわたって繰り越し、その後の黒字から差し引けます。始めたばかりで赤字になりやすい時期にこそ役立つ仕組みです。赤字を繰り越すには、赤字の年も含めて、連続して確定申告をする必要があります。
3. 家族に払う給与を経費にできる
生計を一にする配偶者や親族が、副業の事業にもっぱら従事している場合、事前に届け出た範囲で、労務に見合った給与を経費にできます(青色事業専従者給与)。ただし、給与を受け取った家族は、配偶者控除や扶養控除の対象から外れます。会社員の副業で使える場面は限られるので、税務署や税理士に確認してから検討しましょう。
4. 一定額未満の備品を、買った年にまとめて経費にできる
仕事用のパソコンなど、長く使う備品は、通常は使える年数に分けて少しずつ経費にします(減価償却)。青色申告をしている中小規模の事業者は、一定額未満のものであれば、買った年にまとめて経費にできる特例があります。対象となる金額や期限は改正で変わることがあるため、使う前に国税庁で確認してください。
青色申告のデメリット・注意点
帳簿づけの手間がかかる:控除額の大きい区分を受けるには、複式簿記(1つの取引を「何に使ったか」と「どこからお金が出たか」の両面で記録する方法)が必要です。会計ソフトを使えば、銀行口座やカードの明細を取り込んで作業を減らせます
提出する書類が増える:確定申告書に、青色申告決算書(損益計算書や貸借対照表など)を添付します
事前の届出に期限がある:期限を過ぎると、その年は青色申告ができません
帳簿や書類の保存が必要:帳簿や領収書などは、原則として7年間(一部の書類は5年間)保存します
副業の入出金を生活費の口座と分けておくと、帳簿づけがぐっと楽になります。口座の分け方は副業用の銀行口座の選び方で解説しています。
副業で青色申告を始める手順
所得の種類を確認する:副業の所得が事業所得(または不動産所得)にあたるかを確認します。雑所得なら、青色申告はできません
開業届を出す:事業を始めたら、「個人事業の開業・廃業等届出書」を、原則として開業の日から1か月以内に税務署へ提出します
青色申告承認申請書を出す:青色申告をしたい年の3月15日までに提出します。その年の1月16日以後に事業を始めた場合は、事業を始めた日から2か月以内です。一度承認されれば、毎年出し直す必要はありません
帳簿をつけ、書類を保存する:日々の売上と経費を記録し、領収書や請求書を保存します
確定申告をする:翌年の2月16日から3月15日まで(土日祝日の場合は翌平日)に、青色申告決算書を添えて申告します。高い区分の控除を受けるなら、e-Taxで期限内に提出しましょう
開業届と青色申告承認申請書は、e-Taxや会計ソフトからも提出できます。書類の様式や提出方法は、国税庁のWebサイトで確認してください。確定申告全体の流れは副業の確定申告のやり方で解説しています。
また、副業の住民税をどう納めるかによって、勤務先に副業が知られることがあります。勤務先の就業規則を確認したうえで、住民税と副業の関係もあわせて確認しておきましょう。
よくある質問
Q. 会社員の副業でも青色申告はできますか?
A. 副業の所得が事業所得または不動産所得(ほかに山林所得)にあたれば、会社員でもできます。ただし、会社員の副業の所得は雑所得にあたることが多く、雑所得では青色申告はできません。
Q. 副業の所得が事業所得か雑所得かは、どう判断しますか?
A. 国税庁は、取引を記録した帳簿書類を保存していれば、おおむね事業所得、保存していなければ、おおむね雑所得という考え方を示しています。ただし、帳簿を保存していても、収入がわずかな場合などは事業所得にあたらないことがあります。迷う場合は税務署や税理士に相談してください。
Q. 株やFXの利益でも青色申告はできますか?
A. できません。株式の売却益は譲渡所得、配当は配当所得、FXや暗号資産の利益は主に雑所得にあたり、いずれも青色申告の対象外です。
Q. 青色申告承認申請書はいつまでに出せばいいですか?
A. 青色申告をしたい年の3月15日までです。その年の1月16日以後に新しく事業を始めた場合は、事業を始めた日から2か月以内に提出します。期限を過ぎると、その年は白色申告になります。
Q. 青色申告特別控除はいくら受けられますか?
A. 帳簿のつけ方と申告の方法によって変わります。最高額は2026年分までは65万円、2027年分からは税制改正で75万円になり、いずれも複式簿記での記帳やe-Taxでの申告などが条件です。簡易な帳簿の場合は10万円です。申告する年分の要件は、国税庁のWebサイトで確認してください。
Q. 副業が赤字のとき、青色申告をすると得をしますか?
A. 事業所得の赤字は、翌年以後3年間繰り越して、その後の黒字から差し引けます。ただし、実態が事業といえない活動を事業所得として申告し、給与と差し引きすることはできません。雑所得の赤字は給与所得と差し引きできません。
Q. 副業の所得が20万円以下でも、青色申告をする意味はありますか?
A. 会社員で給与以外の所得が20万円以下なら、所得税の確定申告は原則不要で、青色申告をする場面はあまりありません。ただし、住民税の申告は別に必要です。また、赤字を繰り越したい場合などは、確定申告をすることで青色申告のメリットを受けられます。
Q. 青色申告に開業届は必要ですか?
A. 事業を始めた人は、原則として開業の日から1か月以内に開業届を出すことになっています。青色申告承認申請書とあわせて提出するのが一般的です。
Q. 青色申告をやめたいときはどうすればいいですか?
A. やめたい年の翌年3月15日までに、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を税務署に提出します。届け出ない限り、青色申告は続いているものとして扱われます。
※この記事は、執筆時点の公開情報をもとに一般的な内容を解説したものです。青色申告特別控除の金額や要件、特例の対象金額や期限は、税制改正で変わることがあります。申告する年分の制度を国税庁のWebサイトで確認し、個別の判断は税務署や税理士にご相談ください。
まとめ
青色申告は、帳簿をきちんとつける人が受けられる優遇のある申告方法です。ただし、対象は事業所得・不動産所得・山林所得だけで、会社員の副業で多い雑所得では使えません。副業の所得が事業所得にあたるかどうかは、帳簿書類を保存しているかが大きな目安になります。
副業が事業といえる規模になってきたら、開業届と青色申告承認申請書を期限までに出し、帳簿づけを始めましょう。控除額や特例は税制改正で変わることがあるため、申告の前に国税庁で最新の要件を確認することが大切です。
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